プロラクチン(Prolactin)は、主に脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、女性の体において非常に重要な役割を果たします。特に、妊娠や授乳に関わる生理的な機能に深く関与しています。この記事では、女性におけるプロラクチンの正常値、異常値の影響、測定方法、正常値の基準などについて詳しく解説します。
プロラクチンの基本的な役割
プロラクチンは、主に乳腺に作用して乳汁の生成を促進するホルモンです。授乳中の女性にとっては、乳房の発育と母乳の生成を維持するために不可欠なホルモンとなります。プロラクチンはまた、妊娠の初期段階でも重要な役割を果たし、妊娠を維持するために必要なホルモンの分泌を調整します。

プロラクチンの正常値
プロラクチンの血中濃度は、女性の月経周期やライフステージによって変動します。正常値は以下の通りです。
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月経周期の正常範囲:月経周期の間、プロラクチンの正常値は通常、4.7〜23 ng/mLの間です。この範囲は、サンプルが採取された時間帯によって異なる場合があります。例えば、夜間にプロラクチンが分泌されやすいため、早朝に測定することが推奨されます。
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妊娠中のプロラクチン:妊娠中は、プロラクチンの値が劇的に上昇します。特に、妊娠後期にはプロラクチン値は30〜400 ng/mLに達することが一般的です。
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授乳期のプロラクチン:授乳期には、プロラクチンの値は高く、通常100 ng/mLを超えることもあります。授乳による刺激がプロラクチンの分泌を促進し、母乳の分泌をサポートします。
プロラクチンの異常値
プロラクチンの値が正常範囲を超えると、さまざまな健康問題が発生する可能性があります。異常なプロラクチン値は、ホルモンバランスの乱れを示唆しており、以下のような状況を引き起こすことがあります。
1. 高プロラクチン血症(高プロラクチン症)
高プロラクチン血症は、プロラクチンの血中濃度が異常に高い状態を指します。この状態が続くと、以下のような症状が現れることがあります。
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無月経:月経が停止することがあり、妊娠していないにも関わらず生理が来ない状態になります。
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不妊症:高いプロラクチンレベルは、排卵の妨げとなり、妊娠しづらくなります。
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乳汁分泌(授乳していない場合でも):授乳していない女性でも乳汁が分泌されることがあります(乳漏症)。
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性欲の低下:プロラクチンの過剰分泌が性欲に影響を与えることがあります。
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頭痛、視覚障害:プロラクチンを分泌する脳下垂体に異常がある場合、視覚障害や頭痛を引き起こすことがあります。
高プロラクチン血症の原因としては、以下のようなものがあります。
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脳下垂体腺腫(プロラクチン産生腫瘍):最も一般的な原因で、腫瘍がプロラクチンの過剰分泌を引き起こします。
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薬剤:抗精神病薬や抗うつ薬、降圧薬などが高プロラクチン血症を引き起こすことがあります。
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甲状腺機能低下症(Hypothyroidism):甲状腺ホルモンが低い場合、プロラクチンの分泌が増加することがあります。
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ストレス:身体的または精神的なストレスがプロラクチン値に影響を与えることがあります。
2. 低プロラクチン血症(低プロラクチン症)
低プロラクチン血症は、血中のプロラクチンレベルが異常に低い状態を指します。これもまた、女性の健康に影響を及ぼす可能性があります。
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乳汁分泌の低下:授乳中にプロラクチンが不足していると、十分な母乳が生成されない可能性があります。
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無月経や不妊症:プロラクチンが低すぎる場合、月経不順や排卵障害を引き起こし、不妊症の原因となることがあります。
低プロラクチン血症の原因としては、以下のようなものがあります。
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脳下垂体機能低下:脳下垂体の異常によりプロラクチンの分泌が減少することがあります。
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過度の運動や体重減少:過度なダイエットや激しい運動が原因でプロラクチンが低下することがあります。
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薬剤の影響:ドパミン作動薬や過度のストレスが低プロラクチン血症を引き起こすことがあります。
プロラクチンの測定方法
プロラクチンの血液検査は、簡単に行うことができます。血液検査を通じて、プロラクチンの濃度を測定しますが、正確な結果を得るためには以下の点に注意する必要があります。
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検査のタイミング:プロラクチンは一日の中で変動するため、朝の早い時間に検査を受けることが推奨されます。特にストレスや運動後、食事後にプロラクチン値が一時的に上昇することがあるため、検査前にこれらを避けることが重要です。
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検査前の準備:一部の薬剤やストレスが影響するため、医師に相談して検査を受ける前に服用している薬について報告することが大切です。
まとめ
プロラクチンは、女性の生理的な役割を果たす重要なホルモンであり、その異常値は月経不順や不妊症、母乳の分泌に影響を与える可能性があります。正常値を維持することは、健康な生理機能を維持するために不可欠です。もし異常なプロラクチン値が検出された場合は、医師と相談し、原因を特定し適切な治療を受けることが重要です。