エイズ（後天性免疫不全症候群、AIDS）は、ヒト免疫不全ウイルス（HIV）によって引き起こされる病気です。このウイルスは免疫系を弱体化させ、体が感染症や癌といった疾患に対して抵抗力を失う原因となります。エイズの症状は、HIVに感染してから時間の経過とともに現れます。感染初期から進行期にかけての段階を通じて、さまざまな症状が現れることがあります。以下では、エイズの症状について、感染の初期、慢性期、エイズ発症期に分けて詳細に説明します。
1. 初期感染期（急性HIV感染期）
HIVに感染してから約2～4週間後に、急性HIV感染症（初期感染症）が発症することがあります。この時期は「急性レトロウイルス症候群」または「急性HIV症候群」とも呼ばれ、インフルエンザに似た症状が現れることが特徴です。具体的な症状には以下のものがあります：
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発熱：最も一般的な症状で、しばしば高熱が続きます。
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のどの痛み：咳や喉の痛みを伴うことがあります。
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筋肉痛や関節痛：体の痛みや不快感が広がります。
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リンパ節の腫れ：首や脇の下、鼠径部などのリンパ節が腫れることがあります。
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頭痛：強い頭痛を感じることがしばしばあります。
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発疹：体に赤い発疹が現れることがあります。
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下痢：消化器系にも影響を及ぼし、頻繁に下痢が発生します。
これらの症状は、HIV感染後数日から数週間でピークを迎え、その後は自然に軽減します。しかし、この時期に適切な診断を受けないと、HIV感染が見過ごされることがあります。
2. 慢性HIV感染期（無症候期）
急性期を過ぎると、HIVは「慢性期」に進行します。この期間は「無症候期」または「潜伏期」と呼ばれ、症状がほとんど現れないことが特徴です。ウイルスは体内で増殖し続けますが、免疫系は依然として一定の防御機能を保っています。この段階では、HIVに感染していることに気づかないことが多いですが、以下のような軽微な症状が見られることがあります：
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微熱：低い程度の発熱が続くことがあります。
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リンパ節の腫れ：無症候期でもリンパ節の腫れが持続することがあります。
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疲労感：慢性的な疲労感や倦怠感が現れることがあります。
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体重減少：目立った体重の減少がある場合がありますが、特に意識的なダイエットや運動を行っていない場合です。
無症候期は通常、数年にわたって続くことがあり、この段階ではエイズに進行しない限り、症状は非常に軽度またはほとんど感じられないことが多いです。
3. エイズ発症期（後天性免疫不全症候群）
HIV感染が進行し、免疫系が著しく弱体化すると、エイズを発症します。この段階に入ると、免疫力が極端に低下し、さまざまな重篤な疾患にかかるリスクが高まります。エイズが進行した場合、以下のような症状が現れます：
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重度の免疫不全：体が通常の病気や感染症に対して無防備になるため、体内に細菌、ウイルス、真菌などが侵入しやすくなります。
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肺炎：肺炎や結核などの呼吸器系の感染症が発生しやすくなります。
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カンジダ症：口腔内や食道に白いカンジダ菌（真菌）が増殖し、食事や飲み込みに支障をきたすことがあります。
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体重減少と筋肉量の低下：著しい体重減少（「消耗性疾患」）が見られ、筋肉が痩せ細っていきます。
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下痢：持続的な下痢が発生し、体液の喪失が続きます。
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神経系の症状：記憶障害、判断力の低下、認知機能の障害などが現れることがあり、HIV関連の神経障害（HIV関連認知症など）が進行することがあります。
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カポジ肉腫やリンパ腫：エイズ患者では、皮膚に紫色の腫瘍（カポジ肉腫）や、リンパ系の癌であるリンパ腫が見られることがあります。
これらの症状は、免疫システムが深刻に弱体化しているため、生命を脅かす状態になることが多いです。エイズを発症した場合、適切な治療を受けないと命に関わることがあります。
4. エイズの進行を遅らせるための治療
現在では、抗レトロウイルス療法（ART）がHIV感染症に対する標準的な治療法となっています。この治療法により、HIVのウイルス量を抑え、免疫システムの機能を回復させることができます。ARTを適切に続けることで、HIV感染者はエイズを発症せずに健康な生活を送ることができる可能性が高くなります。
エイズを早期に発見し、早期に治療を開始することが、予後を大きく改善するために非常に重要です。HIVに感染した疑いがある場合は、早期に医療機関で検査を受けることが推奨されます。
結論
エイズは、初期感染期から発症期までさまざまな症状を伴い、早期の診断と治療が重要です。エイズを予防するためには、HIV感染を防ぐための対策（例えば、コンドームの使用や清潔な注射器の使用）が必要です。また、感染者が早期に治療を受けることで、エイズの発症を遅らせ、生活の質を保つことが可能となります。