コモロ連合(Union des Comores)は、1975年のフランスからの独立以来、数多くの政変と政治的混乱を経験してきた。この島国は、アフリカ大陸の東海岸沖に位置し、独立以降、20回以上のクーデターやその未遂事件が発生している。本稿では、独立以降の歴代大統領とその政権の特徴を、政治的背景や主要な出来事とともに詳細に解説する。AP News
コモロの歴代大統領一覧(1975年以降)
以下の表は、1975年の独立以降のコモロの国家元首を時系列で示したものである。

番号 | 氏名 | 在任期間 | 政治的背景・特徴 |
---|---|---|---|
1 | アフメド・アブダラ(Ahmed Abdallah) | 1975年7月6日 – 1975年8月3日 | 初代国家元首。独立直後に就任するも、クーデターにより短期間で失脚。 |
2 | サイード・モハメド・ジャファール(Said Mohamed Jaffar) | 1975年8月3日 – 1976年1月3日 | 革命評議会議長として政権を掌握。短期間の暫定政権を率いた。 |
3 | アリ・ソイリ(Ali Soilih) | 1976年1月3日 – 1978年5月13日 | 革命的社会主義を掲げる。1978年にクーデターで失脚し、同年に暗殺される。 |
4 | サイード・アットゥマニ(Said Atthoumani) | 1978年5月13日 – 1978年5月23日 | 軍事政権の一時的指導者。わずか10日間の在任。 |
5 | アフメド・アブダラ(Ahmed Abdallah) | 1978年10月3日 – 1989年11月26日 | 再度政権を掌握。フランス人傭兵ボブ・デナールの支援を受け、長期政権を築く。1989年に暗殺される。 |
6 | サイード・モハメド・ジョハール(Said Mohamed Djohar) | 1989年11月27日 – 1995年9月29日 | アブダラの死後、暫定大統領を経て正式に就任。1995年にクーデターで一時失脚。 |
7 | コンボ・アユバ(Combo Ayouba) | 1995年9月29日 – 1995年10月2日 | 軍事政権の調整役。わずか3日間の在任。 |
8 | カアビ・エル=ヤシュルトゥ・モハメド(Caabi El-Yachroutu Mohamed) | 1995年10月2日 – 1996年1月26日 | 暫定大統領として政権を運営。 |
9 | サイード・モハメド・ジョハール(Said Mohamed Djohar) | 1996年1月26日 – 1996年3月25日 | 一時的に政権復帰。短期間の在任。 |
10 | モハメド・タキ・アブドゥルカリム(Mohamed Taki Abdoulkarim) | 1996年3月25日 – 1998年11月6日 | 民主的選挙で選出。1998年に急死。 |
11 | タジディン・ベン・サイード・マスウンデ(Tadjidine Ben Said Massounde) | 1998年11月6日 – 1999年4月30日 | タキの死後、暫定大統領として政権を運営。 |
12 | アザリ・アスーマニ(Azali Assoumani) | 1999年4月30日 – 2002年5月26日 | 軍事クーデターで政権を掌握。2002年に民政移管。 |
13 | アザリ・アスーマニ(Azali Assoumani) | 2002年5月26日 – 2006年5月26日 | 民主的選挙で再選。任期満了で退任。 |
14 | アフメド・アブダラ・モハメド・サンビ(Ahmed Abdallah Mohamed Sambi) | 2006年5月26日 – 2011年5月26日 | イスラム主義者として知られる。民主的選挙で選出。 |
15 | イキリル・ドイニン(Ikililou Dhoinine) | 2011年5月26日 – 2016年5月26日 | モヘリ島出身。平穏な政権運営を行う。 |
16 | アザリ・アスーマニ(Azali Assoumani) | 2016年5月26日 – 現在 | 2016年に再選。2018年の憲法改正で再選可能にし、2024年に4期目に就任。 |
政権の変遷と政治的背景
初期の混乱とクーデターの連鎖(1975年–1989年)
コモロは1975年の独立直後から政治的混乱に見舞われた。初代大統領アフメド・アブダラは短期間で失脚し、その後もクーデターが相次いだ。特にアリ・ソイリ政権は社会主義的改革を推進したが、1978年に軍事クーデターで倒され、同年に暗殺された。その後、アブダラが再び政権を掌握し、フランス人傭兵ボブ・デナールの支援を受けて長期政権を築いたが、1989年に暗殺された。Reuters+2AP News+2AP News+2
民主化への試みと再度の軍事介入(1990年–1999年)
アブダラの死後、サイード・モハメド・ジョハールが大統領に就任したが、1995年に再びデナールによるクーデターが発生。フランスの軍事介入により鎮圧されたが、政治的安定は得られなかった。1999年にはアザリ・アスーマニ大佐がクーデターで政権を掌握し、再び軍事政権となった。
民主的選挙と政権交代(2002年–2016年)
2002年、アスーマニは民政移管を実施し、大統領選挙で正式に選出された。その後、2006年にはイスラム主義者のアフメド・アブダラ・モハメド・サンビが選出され、2011年にはイキリル・ドイニンが大統領となった。この期間は比較的安定した政権運営が行われた。
アスーマニの再登場と権力集中(2016年–現在)
2016年、アスーマニが再び大統領に選出された。2018年には憲法改正を実施し、連続再選が可能となった。これにより、2024年には4期目の大統領に就任した。しかし、選挙の公正性や権力の集中に対する懸念が国内外で高まっている。Reuters+1History Rep+1
現在の政治情勢と課題
アスーマニ政権下での権力集中や選挙の公正性に対する疑問が指摘されている。2024年の大統領選挙では、野党が不正を訴え、暴動が発生するなど、政治的緊張が高まった。また、経済的課題や若者の失業率の高さ、移民問題など、多くの課題が山積している。
結論
コモロの政治史は、クーデターと政権交代の連続であり、安定した民主主義の確立には至っていない。アスーマニ政権の今後の動向や、民主的な制度の強化が求められている。国際社会の支援と監視のもと、コモロが持続可能な政治体制を築くことが期待される。