イスラム教における「五つの定められた礼拝（サラート）」は、ムスリムの信仰と生活の中で非常に重要な役割を果たしています。サラートは一日五回行われる必須の礼拝であり、イスラムの柱の一つとして位置づけられています。これらの礼拝がいつ、どのようにして定められたのかを理解することは、イスラム教の歴史と教義を深く知る上で重要です。
サラートの起源
サラートは、イスラム教の創始者である預言者ムハンマドに対して神から与えられた指令に基づいています。預言者ムハンマドの時代におけるサラートの定めは、特に「夜の昇天の夜（ミアラージ）」に関連しています。この出来事は、ムハンマドが神の御前に昇り、天の世界で神と直接対話するという壮大な体験でした。
ミアラージ（夜の昇天）
ムハンマドが神に昇天したのは、イスラム暦で第2年（西暦623年）のこととされています。この夜、ムハンマドは神の命令を受け、最初に50回の礼拝を命じられました。しかし、ムハンマドはその後、ムーサ（モーセ）を含む歴代の預言者たちからアドバイスを受け、神にお願いして回数を減らすように求めました。最終的に、神はサラートの回数を5回に減らすことを許しました。
サラートの定め
サラートが5回に定められた経緯は、イスラム教徒にとって非常に重要です。五つの定められた礼拝は、日の出前、正午、午後、日没後、夜の五つの時間帯に行われます。この五回の礼拝は、ムスリムの一日を通して神との繋がりを維持し、心の清浄さを保つための手段として、また生活全体を神に捧げるための方法として位置づけられています。
それぞれの礼拝
-
ファジュル（朝の礼拝） – 朝日が昇る前に行う礼拝です。この礼拝は一日の始まりを神に感謝し、清める儀式として重要です。
-
ズフル（正午の礼拝） – 正午の時間帯に行われる礼拝です。忙しい日常生活の中で、心を静めて神に向かう時間として、非常に意味深いものです。
-
アスル（午後の礼拝） – 午後の時間帯に行う礼拝で、日中の活動の合間に神に心を向ける時間です。
-
マグリブ（日没後の礼拝） – 日没後に行う礼拝で、一日の終わりを神に感謝する時間です。
-
イシャ（夜の礼拝） – 夜の深い時間帯に行う礼拝で、寝る前に神に感謝と祈りを捧げます。
まとめ
サラートは、ムスリムにとって精神的な充足をもたらすとともに、日常生活における規律をも確立する重要な役割を果たしています。五つの礼拝の回数やその意味を理解することは、イスラム教徒としての信仰を深めるうえで不可欠です。最初に50回の礼拝が命じられ、最終的に5回に定められたという経緯は、神の慈悲と人間への理解を示しており、サラートを通じてムスリムは日々神とのつながりを強化し、信仰を深めています。
