シェンゲン協定（Schengen Agreement）は、ヨーロッパにおける国境管理を緩和し、参加国間で自由な移動を可能にするための協定です。シェンゲン圏に属する国々では、通常の国境検査が廃止されており、これにより人々はパスポートなしで自由に移動できます。シェンゲン圏は、1985年にシェンゲン協定が署名されたことを基盤にしており、その後の協定により拡大が進みました。
シェンゲン圏に加盟するためには、参加国が特定の基準を満たす必要があります。これには、移民管理、警察協力、ビザ政策の統一、データ共有のシステムの導入などが含まれます。シェンゲン圏内では、各国が共同で治安を維持し、犯罪対策を講じています。また、シェンゲンビザを取得することで、シェンゲン圏内のほぼ全ての国を訪れることができます。
シェンゲン圏の加盟国
シェンゲン圏に参加している国々は、EU加盟国のほか、EUに加盟していない国も含まれています。2025年4月現在、シェンゲン圏には以下の国々が含まれています。
-
オーストリア
-
ベルギー
-
チェコ共和国
-
デンマーク
-
エストニア
-
フィンランド
-
フランス
-
ドイツ
-
ギリシャ
-
ハンガリー
-
アイスランド
-
イタリア
-
ラトビア
-
リトアニア
-
ルクセンブルク
-
マルタ
-
オランダ
-
ノルウェー
-
ポーランド
-
ポルトガル
-
スロバキア
-
スロベニア
-
スペイン
-
スウェーデン
-
スイス
-
リヒテンシュタイン（EU非加盟国）
これらの国々は、シェンゲン圏内での旅行者の移動を自由にし、効率的な協力体制を構築しています。シェンゲン圏においては、国境を越える際のパスポートやIDカードの提示は不要で、通常、警察や移民局のチェックは最小限に抑えられています。
シェンゲンビザとその利用方法
シェンゲンビザは、シェンゲン圏内を短期間（90日以内）で旅行するためのビザで、シェンゲン協定に加盟している国々のどこでも利用することができます。このビザを取得すると、シェンゲン圏内での旅行において、個別にビザを申請する必要がなくなります。
シェンゲンビザを申請するには、出発国に所在するシェンゲン国の大使館や領事館で申請を行う必要があります。また、シェンゲンビザは旅行の目的によって種類が分かれ、観光、ビジネス、家族訪問など、さまざまな目的で発行されます。
シェンゲン圏内での警察協力とセキュリティ
シェンゲン圏では、共通のセキュリティポリシーが採用され、参加国間での犯罪防止や犯罪者の逮捕・追放に関する協力が強化されています。特に、シェンゲン圏内で発生した犯罪に対しては、他の加盟国と情報を共有し、迅速に対応できる体制が整えられています。
また、シェンゲン圏内では、警察当局が協力して、テロ活動や人身売買などの重大な犯罪に対する取り組みも行っています。シェンゲン圏内の警察は、相互に協力して捜査活動を行うことができ、国際的な犯罪に対する対応力を高めています。
シェンゲン圏外の国々とその影響
シェンゲン圏に加入していないEU加盟国もあります。これらの国々（例：アイルランド、ブルガリア、クロアチア、ルーマニア）は、シェンゲン圏に参加していませんが、それでもシェンゲン圏と連携しており、特定の協力関係が存在します。例えば、アイルランドはシェンゲン協定に加盟していませんが、他のEU加盟国との協力を強化しており、シェンゲン圏の近隣であるため、移動がスムーズに行われるように調整されています。
また、シェンゲン圏に参加していないEU外の国々（例えば、アメリカ合衆国やカナダ）は、シェンゲン圏へのアクセスを持たないため、通常のビザ申請手続きを踏む必要があります。シェンゲンビザを取得しない限り、シェンゲン圏内での自由な移動はできません。
シェンゲン圏の将来と課題
シェンゲン圏は、現在も多くの国々で利用されており、ヨーロッパ内での自由な移動を支える重要な枠組みとなっています。しかし、シェンゲン圏にはいくつかの課題もあります。特に、移民問題やテロリズムの脅威、国境の管理に関する問題が取り沙汰されています。シェンゲン圏内での安全と自由な移動のバランスを保つためには、さらに強化された協力と監視体制が求められるでしょう。
また、シェンゲン圏の拡大には注意が必要です。新たに加盟を希望する国々が増えていますが、シェンゲン圏に参加するには厳しい基準があり、加盟国がその基準を満たす必要があります。
シェンゲン圏は、ヨーロッパにおける旅行や貿易を容易にし、経済や文化交流の促進に貢献しています。しかし、その維持と運営には、加盟国間での協力と一貫した政策の実施が不可欠です。