世界の人口について、特に預言者ムハンマド（平安あれ）が生きていた時代の数値は、正確に記録されたものは残っていません。しかし、考古学的、歴史的な研究から、彼の生存時期である7世紀初頭の人口についての推定がいくつかあります。
1. 預言者ムハンマドの時代（6世紀末〜7世紀初頭）
預言者ムハンマドは570年に生まれ、632年に亡くなりました。この時期の人口に関する正確なデータは存在しませんが、当時の世界の人口を推定するためにいくつかの手法が用いられています。
a) アラビア半島の人口
預言者ムハンマドが活動していたアラビア半島の人口は、おおよそ200万から500万人と推定されています。アラビア半島は砂漠地帯が多く、農業や都市開発も限られていたため、比較的少ない人口であったと考えられています。マッカ（メッカ）やマディーナ（メディナ）などの主要都市では、商業活動が盛んであり、一定の都市人口があったとされていますが、それでもアラビア半島全体の人口は限定的でした。
b) 世界全体の人口
7世紀初頭の世界全体の人口については、学者たちによる推定がありますが、概ね2億人から3億人程度であったと考えられています。この時期、ヨーロッパではローマ帝国の衰退後、ビザンツ帝国が存在しており、アジアでは中国の隋・唐王朝が栄え、インド亜大陸ではグプタ朝が影響力を持っていました。アフリカではエジプトやヌビアの王国が存在し、人口はそれぞれの地域で異なっていたものの、全体としては現代のような密集した都市文明は発展していませんでした。
c) 中東と地中海地域
中東地域や地中海沿岸の都市には、商業活動や文化交流が盛んでした。特にビザンツ帝国（東ローマ帝国）やペルシャ帝国（サーサーン朝）は大きな都市圏を形成し、その人口はかなり多かったと推測されています。ビザンツ帝国の首都コンスタンティノープル（現在のイスタンブール）は、おそらく50万人以上の人口を有していたと考えられています。
一方、ペルシャ帝国の首都クテシフォンも同様に大きな都市で、これらの帝国には数百万の人々が住んでいたと推定されています。アフリカのエジプトやインドでも、人口は数百万に達していたとされ、これらの地域の大規模な都市や王国は、当時の世界の中心的な文明を代表していました。
d) 中国とインド
中国では、隋・唐王朝の時代であり、人口はおそらく5000万から8000万人に達していたとされます。インドではグプタ朝が続いており、人口は1億人以上とされることもありますが、正確な数値は不明です。しかし、これらの地域は当時の文明の中心地として、多くの人々が集まり、活発な商業と文化の交流が行われていたことは間違いありません。
2. 預言者ムハンマドの生涯と人口の関係
預言者ムハンマドが生きていた時代、アラビア半島はさまざまな部族が支配し、部族間の争いが絶えなかった時期でもあります。このため、アラビアの人口は比較的少なく、各部族が自分たちの生活圏内で自給自足的な生活をしていたと考えられます。しかし、ムハンマドが啓示を受け、その教えを広めていく中で、アラビア半島の一部の地域では急速に信者を増やし、ムスリム社会が形成されていきました。
3. 結論
預言者ムハンマドが生きていた時代の世界人口は、おおよそ2億人から3億人程度と推定されています。アラビア半島の人口は数百万人程度であり、ムハンマドの教えが広まるにつれて、その影響力が拡大していきました。世界全体の人口は当時の技術と生活水準を考慮すれば、現代と比較するとかなり少なく、地域ごとに人口分布に大きな差がありました。
当時の人口に関する正確なデータは残っていないものの、歴史的な文献や考古学的な証拠に基づいて、以上のような推定がなされており、ムハンマドの時代は今とは異なる、非常に多様で広範囲にわたる文明が共存していた時期だったことがわかります。