リウマチ性心疾患(リウマチ性心臓病)は、主にリウマチ熱(A型β溶連菌による感染症)が引き起こす慢性的な心臓の疾患です。リウマチ熱は通常、喉の感染症(咽頭炎)から発症し、適切に治療されなかった場合に心臓に影響を及ぼします。リウマチ性心疾患は、心臓の弁(特に僧帽弁や大動脈弁)を損傷することが多く、最終的には弁閉鎖不全や弁狭窄を引き起こすことがあります。この疾患は、心不全や心房細動、さらには脳卒中などの合併症を引き起こすこともあります。
リウマチ性心疾患の治療は、病気の進行を遅らせ、症状を軽減し、心臓の機能を保つことを目的としています。治療は薬物療法、手術的介入、ライフスタイルの改善などを含みます。
1. 薬物療法
リウマチ性心疾患の治療において最も重要な薬物は、抗生物質と抗炎症薬です。
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抗生物質: リウマチ熱の原因となる溶連菌を完全に治療するために、ペニシリンなどの抗生物質が処方されます。リウマチ性心疾患の発症を予防するために、感染後も長期間にわたって抗生物質を使用することがあります。
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抗炎症薬: 炎症を抑えるために、アスピリンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が使われることがあります。これにより、心臓の弁の炎症を軽減し、病気の進行を防ぐことができます。
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コルチコステロイド: 重度の炎症や症状がある場合には、コルチコステロイドが使用されることもあります。
2. 手術的治療
リウマチ性心疾患が進行すると、心臓の弁が損傷し、弁置換や修復手術が必要になることがあります。特に、重度の弁狭窄や弁閉鎖不全が生じた場合、手術が行われることがあります。
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弁置換手術: 弁が完全に損傷している場合、人工弁に置き換える手術が行われます。人工弁は機械的なものや生体弁(動物の弁)などがあり、患者の状態に応じて選択されます。
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弁修復手術: 損傷が比較的軽度な場合、弁の修復が行われることがあります。この手術は、患者にとってより負担が少なく、回復が早い場合があります。
3. ライフスタイルの改善
リウマチ性心疾患の治療において、生活習慣の改善も重要です。以下の点に留意することが推奨されます。
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適切な食事: 心臓の健康を保つために、低塩・低脂肪の食事が推奨されます。特に、コレステロールやトリグリセリドの値が高い場合には、食事を改善することが重要です。
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定期的な運動: 適度な運動は心臓の健康を維持し、症状を軽減するのに役立ちます。しかし、運動を始める前に医師に相談し、適切な運動プログラムを作成することが大切です。
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禁煙: 喫煙は心臓疾患のリスクを高めます。リウマチ性心疾患を持つ患者にとっても、禁煙は非常に重要です。
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定期的なフォローアップ: 症状が進行する前に早期に対応するため、定期的に医師の診察を受けることが勧められます。心臓の状態をモニタリングし、必要な治療を早期に行うことが大切です。
4. 合併症の予防
リウマチ性心疾患は、心不全や脳卒中などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。これらの合併症を予防するためには、血圧の管理や抗凝固療法が必要な場合もあります。
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抗凝固療法: 心房細動が発生した場合、血栓の形成を防ぐために抗凝固薬(ワルファリンなど)が処方されることがあります。これにより、脳卒中のリスクを減少させることができます。
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血圧の管理: 高血圧は心不全の進行を助長するため、血圧を正常範囲に保つことが重要です。降圧薬の使用が必要になることがあります。
5. 予防と長期管理
リウマチ性心疾患の予防には、リウマチ熱の予防が最も重要です。喉の感染症が発生した際には、迅速に抗生物質を使用して治療することが必要です。また、リウマチ熱を一度発症した後は、再発を防ぐために長期的に抗生物質を使用することが推奨されます。
リウマチ性心疾患は進行性の病気であり、早期発見と治療が重要です。適切な薬物療法や手術、生活習慣の改善により、患者の生活の質を保ち、合併症を防ぐことが可能です。定期的な医療チェックを受けることで、病気の進行を遅らせることができます。
