リウマチ性心疾患(リウマチ性心臓病)は、リウマチ熱(急性の免疫反応)によって引き起こされる心臓の炎症性疾患であり、主に小児や若年成人に見られます。この疾患は、A群β溶血性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)による咽頭感染が原因となり、適切な治療を受けない場合にリウマチ熱が発症し、その結果として心臓に影響を及ぼすことがあります。
リウマチ性心疾患の症状
リウマチ性心疾患の症状は、疾患が進行するにつれて多様化し、患者の状態によって異なります。以下に主な症状を説明します。
1. 心臓の症状
リウマチ性心疾患の最も重要な症状は、心臓の機能に関連するものです。心臓の弁(特に僧帽弁と大動脈弁)が炎症を起こし、弁の機能が低下します。この弁膜症は「リウマチ性弁膜症」と呼ばれ、以下のような症状を引き起こします。
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呼吸困難:特に運動時や寝ているときに感じることがあります。弁が正常に機能しないことで心臓に過度の負担がかかり、血液が肺にうっ血します。
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動悸:弁の異常が原因で、心臓が不規則に鼓動することがあります。これにより、心拍が速くなったり、乱れたりすることがあります。
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胸痛:心臓にかかる負担が増加することで、胸の痛みや不快感を感じることがあります。
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むくみ:心臓が効果的に血液を送り出せなくなり、足や顔、腹部にむくみが現れることがあります。
2. 関節の症状
リウマチ熱が引き起こす関節炎もリウマチ性心疾患の一部です。関節炎は以下の特徴があります:
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急性の関節痛:特に膝、肘、手首など大きな関節が影響を受けやすく、激しい痛みを伴います。
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関節の腫れ:炎症が進行すると、関節が腫れて赤くなることがあります。
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関節の可動域制限:痛みや腫れにより、関節の動きが制限されることがあります。
3. 皮膚の症状
リウマチ熱による皮膚症状も見られることがあります。これには以下のものがあります:
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紅斑(エリテマ):皮膚に赤い斑点や発疹が現れることがあります。これらの発疹は通常、関節炎が進行している場合に見られます。
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皮膚の結節:皮膚の下に硬いしこりができることがあります。これらは「リウマチ結節」と呼ばれ、心臓の症状が重篤な場合に見られることがあります。
4. 神経系の症状
神経系への影響もあり、特に小児や若年成人において以下の症状が現れることがあります:
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舞踏病(Sydenham’s chorea):不規則で不安定な動きが顔面や四肢に現れ、身体が制御不能になることがあります。これはリウマチ熱に伴う神経系の障害です。
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神経過敏性:過度の疲労やストレスにより、神経過敏や不安感が増すことがあります。
診断と検査
リウマチ性心疾患の診断は、主に臨床症状と血液検査を基に行われます。検査方法としては、以下が一般的です。
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心エコー検査:心臓の弁の状態や機能を評価するために行います。弁の異常や血流の問題を確認するために使用されます。
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血液検査:A群β溶血性連鎖球菌に対する抗体が上昇しているかどうかを確認するために、抗ストレプトリジンO(ASO)テストやC反応性蛋白(CRP)テストなどが行われます。
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心電図(ECG):心臓の電気的な活動を調べ、異常がないかを確認します。
治療方法
リウマチ性心疾患の治療は、主に以下の方法で行われます:
1. 薬物療法
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抗生物質:リウマチ熱の原因となるA群β溶血性連鎖球菌を完全に排除するために、ペニシリン系の抗生物質が使用されます。
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抗炎症薬:関節炎や心臓の炎症を軽減するために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されることがあります。
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ステロイド:重度の炎症や関節痛を抑えるために、ステロイド剤が使用されることがあります。
2. 外科的治療
リウマチ性弁膜症が重度である場合、手術が必要となることがあります。弁の修復や置換手術が行われることがあります。
3. 生活習慣の改善
心臓の負担を軽減するために、適度な運動やバランスの取れた食事を心がけることが重要です。ストレスの管理も重要な要素です。
予防方法
リウマチ性心疾患は、A群β溶血性連鎖球菌による感染を防ぐことで予防が可能です。咽頭感染を早期に発見し、適切な抗生物質で治療することが重要です。また、リウマチ熱の再発を防ぐために、予防的に抗生物質を長期間服用することが推奨されることがあります。
結論
リウマチ性心疾患は、心臓に深刻な影響を及ぼす可能性のある疾患ですが、早期の診断と適切な治療により、予後を改善することができます。特に、リウマチ熱の予防が重要であり、感染症の早期治療と適切な薬物療法が効果的な予防策となります。
