唾液腺の役割と疾患

唾液腺は、唾液を分泌する重要な役割を担う腺で、口腔内での消化活動を助け、口腔内の湿度を保つ役割も果たしています。これらの腺は、唾液の分泌を通じて、食べ物を湿らせて噛みやすくしたり、消化を開始したりするだけでなく、口腔内の清潔を保ち、病原菌から保護する働きもあります。唾液腺は主に三種類に分類され、それぞれ異なる場所に位置しています。

唾液腺の種類と場所

  1. 耳下腺(じかせん)

    • 耳下腺は、顔の横側、耳の下に位置する最大の唾液腺です。左右に1つずつあり、唾液腺の中で最も大きな腺です。この腺から分泌される唾液は、主に水分が多く、酵素を含んでおり、消化を助けます。耳下腺の管は、口腔の上側、上顎の奥の方に開口しており、この場所を「唾液腺開口部」とも呼びます。
  2. 顎下腺(がくかせん)

    • 顎下腺は、下顎の内側、舌の下あたりに位置します。耳下腺に次いで大きな唾液腺で、唾液の分泌は、主に粘性が強く、消化酵素やムチンを多く含んでいます。この腺は、食物が口腔内に入ると反応して、より多くの唾液を分泌し、食物の消化を補助します。
  3. 舌下腺(ぜっかせん)

    • 舌下腺は、舌の下部、口腔内の底に位置します。顎下腺よりも小さく、分泌される唾液はやや粘度が高いです。この唾液は、口腔内の潤滑を保ち、食べ物を湿らせる役割を担います。舌下腺の開口部は、舌の下にあり、そこから唾液が分泌されます。

唾液腺の機能と役割

唾液腺の主な機能は、唾液の分泌ですが、その役割は単なる湿潤にとどまらず、消化の開始、口腔内の健康維持、免疫機能の強化など、さまざまな重要な働きがあります。

  • 消化のサポート

    唾液には、消化酵素であるアミラーゼが含まれており、食べ物を分解する働きがあります。特に、でんぷんを分解して、消化を始める重要な役割を果たします。

  • 口腔内の保護

    唾液は口腔内の粘膜を潤すだけでなく、傷を癒す作用もあります。唾液中に含まれる免疫物質(抗菌成分)やリゾチームなどが、口腔内の細菌やウイルスを抑制し、感染を防ぐ役割を果たします。

  • 食べ物の感知

    唾液は、食べ物の味を感知するのに重要です。食べ物が唾液で溶け、味覚受容体に届くことで、私たちは食べ物の味を感じることができます。

  • 口臭の防止

    唾液は口腔内の清掃機能を持っており、食物の残渣や細菌を洗い流すため、口臭の予防にも重要な役割を果たします。唾液が十分に分泌されないと、口腔内に細菌が増え、口臭が悪化する可能性があります。

唾液腺の疾患

唾液腺は、さまざまな疾患や問題を引き起こす可能性があります。以下はそのいくつかです。

  1. 唾液腺炎

    唾液腺の炎症は、細菌やウイルスによる感染が原因で起こります。最も一般的なのは、細菌性の唾液腺炎で、痛みや腫れが伴います。適切な治療を受けないと、腫れが進行し、膿がたまることがあります。

  2. 唾液腺結石

    唾液腺内で石が形成され、唾液の分泌を妨げることがあります。結石が詰まることで、唾液が逆流し、腺内に炎症を引き起こすこともあります。結石が大きい場合は、外科的に取り除く必要があります。

  3. 乾燥症(ドライマウス)

    唾液腺の働きが低下すると、口腔内が乾燥することがあります。これを乾燥症(ドライマウス)と呼び、薬の副作用や年齢の影響、または免疫系の異常などが原因となることがあります。唾液が不足すると、口臭や飲み込みの困難さを感じることがあります。

  4. 唾液腺腫瘍

    唾液腺に腫瘍ができることがあります。良性の腫瘍もあれば、悪性のものもあります。腫瘍が進行すると、痛みや腫れ、顔面の変形を引き起こすことがあります。早期に発見することが重要です。

結論

唾液腺は、消化や口腔内の健康維持に欠かせない重要な役割を果たしています。その健康を保つためには、日常的な口腔ケアとともに、唾液腺に関する問題が生じた際には、早期に医師の診断を受けることが重要です。唾液腺の異常は、口腔の健康や全身に影響を及ぼす可能性があるため、定期的なチェックや注意深いケアが求められます。

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