糖尿病

妊娠糖尿病の症状と対策

妊娠糖尿病(糖尿病性妊娠)とは、妊娠中に初めて発見される糖尿病の一形態です。通常、妊娠24〜28週頃に発症することが多く、妊娠後期における最も顕著な変化が見られます。この記事では、特に妊娠7ヶ月目(28週〜31週)における妊娠糖尿病の症状、原因、リスク要因、診断方法、そして治療法について詳しく解説します。

妊娠糖尿病の症状

妊娠糖尿病は、多くの場合、症状がほとんどないか、軽度であるため、早期に気づかれないことが多いです。しかし、以下のような症状が現れることがあります。

  1. 頻尿

    妊娠糖尿病では、血糖値の上昇により体が余分な糖を尿として排泄しようとします。その結果、頻繁にトイレに行きたくなることがあります。

  2. 異常な喉の渇き

    高血糖により体が脱水状態になりやすく、強い喉の渇きを感じることがあります。水分を多く摂取しても渇きが収まらないことが特徴です。

  3. 体重の急激な増加

    妊娠糖尿病にかかると、インスリンの働きが不十分となり、体内でエネルギーを適切に処理できなくなります。その結果、余分な糖分が脂肪として蓄積され、体重が急激に増加することがあります。

  4. 疲労感

    高血糖によりエネルギーがうまく使われないため、慢性的な疲労感を感じやすくなります。また、食後に急激なエネルギーの変動がある場合もあります。

  5. 視力の変化

    妊娠糖尿病では、血糖値が高いため視力に変化が見られることがあります。これは、一時的なものですが、視力がぼやけたり、視界が不安定になったりすることがあります。

  6. 手足のしびれやむくみ

    高血糖が続くと、神経に影響を与え、手足のしびれやむくみを引き起こすことがあります。特に妊娠後期にこの症状が現れることがあります。

  7. 出血や感染症のリスク増加

    妊娠糖尿病があると、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなることがあります。また、尿路感染症や膣感染症が増えることもあります。

妊娠糖尿病の原因とリスク要因

妊娠糖尿病の正確な原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。

  • ホルモンの変化

    妊娠中、胎盤から分泌されるホルモンがインスリンの効果を阻害し、血糖値が上昇しやすくなります。この状態は妊娠糖尿病の発症を引き起こす原因となります。

  • 遺伝的要因

    妊娠糖尿病にかかるリスクは、家族に糖尿病患者がいる場合に高くなる傾向があります。特に親や兄弟姉妹に糖尿病があると、リスクが増加します。

  • 肥満

    妊娠前に体重が多いことは、妊娠糖尿病のリスクを高める要因のひとつです。特に腹部に脂肪が多い場合、インスリンの効き目が悪くなるため、高血糖のリスクが高くなります。

  • 高齢妊娠

    妊娠が35歳以上の高齢である場合、妊娠糖尿病の発症リスクが増加します。

  • 過去に妊娠糖尿病になったことがある

    過去に妊娠糖尿病を経験した場合、再度妊娠した際に妊娠糖尿病になるリスクが高くなります。

  • 多胎妊娠

    双子や三つ子など、多胎妊娠の場合は、妊娠糖尿病の発症リスクが高くなります。

妊娠糖尿病の診断方法

妊娠糖尿病は、妊婦健診時に行われる「糖負荷試験(OGTT)」によって診断されます。この検査は、以下のように行われます。

  1. 空腹時血糖測定

    妊娠24〜28週に、空腹時の血糖値を測定します。高血糖が確認された場合、さらに詳しい検査が必要となります。

  2. 糖負荷試験(OGTT)

    75gのブドウ糖を飲んだ後、血糖値を一定時間ごとに測定します。この検査により、血糖値の上昇が確認された場合、妊娠糖尿病と診断されます。

妊娠糖尿病の治療と管理

妊娠糖尿病は、血糖値の管理を適切に行うことで、母体と赤ちゃんの健康を守ることができます。治療方法には、以下のようなアプローチがあります。

  1. 食事療法

    妊娠糖尿病の場合、食事療法が重要です。血糖値を安定させるために、低GI食品を中心に、バランスの取れた食事を摂取することが推奨されます。特に、過剰な糖分を摂取しないように気を付け、食事の回数を分けて摂ることが重要です。

  2. 運動療法

    妊娠中に適度な運動を行うことで、血糖値をコントロールすることができます。ウォーキングや軽いストレッチが推奨されますが、妊婦の体調に合わせて無理なく行うことが大切です。

  3. インスリン治療

    食事療法や運動療法だけでは血糖値がコントロールできない場合、インスリン注射が必要となることがあります。インスリンは妊娠中でも使用できる安全な治療法ですが、使用方法については医師の指導が必要です。

  4. 血糖値のモニタリング

    妊娠糖尿病の管理には、定期的な血糖値のモニタリングが欠かせません。自己血糖測定を行い、血糖値の変動を把握することが大切です。

妊娠糖尿病の合併症

妊娠糖尿病が適切に管理されていない場合、母体と胎児にさまざまなリスクが伴います。

  • 母体への影響

    妊娠糖尿病が長期間続くと、妊婦自身が高血圧症や腎臓病などの合併症を発症するリスクが増加します。また、出産時に帝王切開が必要となる可能性が高くなります。

  • 胎児への影響

    妊娠糖尿病が管理されていないと、胎児に低血糖や早産、巨大児(出生体重が4000g以上)のリスクが高くなります。これらの合併症は、出産後に母子共に問題を引き起こすことがあります。

結論

妊娠糖尿病は、適切に管理することで、母体と胎児の健康を守ることができます。妊娠7ヶ月目に発症することが多いため、定期的な妊婦健診を受け、早期発見と早期治療を心がけることが大切です。血糖値の管理を行い、必要に応じて医師の指導を仰ぐことが、健康な妊娠生活を送るための鍵となります。

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