心電図(ECGまたはEKG)は、心臓の電気的活動を記録するための重要な診断ツールです。これは、心臓の健康を評価するために医療機関で広く使用され、さまざまな心疾患の早期発見に役立ちます。心電図は、心臓のリズム、心拍数、心電図の波形の異常を確認するための最も基本的かつ信頼性の高い方法の1つです。本記事では、心電図の仕組み、測定方法、利用用途、そして解釈の方法について詳しく解説します。
心電図とは?
心電図は、心臓が拍動する際に発生する電気的な信号を記録する医療検査です。心臓は、心筋細胞が電気信号を伝えることによって収縮し、血液を全身に送り出します。この電気的な活動を、心電図によって波形として可視化することができます。心電図は、心臓の健康状態をリアルタイムで反映するため、医師はこれをもとに診断を行います。

心電図の波形
心電図で得られる波形は、主に以下の成分から成り立っています:
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P波:心房が収縮する際の電気的活動を示します。通常、小さな波として現れます。
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QRS複合波:心室が収縮する際の電気的活動を示します。最も大きな波であり、Q波、R波、S波の3つの部分から成り立っています。
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T波:心室が拡張する際の電気的活動を示します。この波は、心室がリラックスし、再び電気的に準備を整える段階を示します。
これらの波形の異常が、さまざまな心疾患の兆候を示すことがあります。
心電図の測定方法
心電図は、通常、病院や診療所で簡単に実施できます。患者は通常、上半身を裸にして、医師や技師の指示に従って特定の位置に体を置きます。電極が胸部、手首、足首に取り付けられ、それぞれが心臓の電気的活動をキャッチして記録します。
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12誘導心電図:最も一般的に使用される心電図の形式で、12個の異なる電極を体に配置して、心臓の全体的な電気的活動を詳細に記録します。
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1誘導心電図:通常、簡易的なチェックのために使用され、1つのリードのみで測定します。
測定中は、動かずにリラックスしていることが求められます。これにより、電気的なノイズを最小限に抑え、正確なデータが得られます。
心電図の用途
心電図は、以下のような多くの臨床的な用途で使用されます:
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不整脈の検出:心臓のリズム異常(不整脈)を検出するために心電図は有効です。例えば、心房細動や心室性期外収縮などが診断されます。
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心筋梗塞の診断:心筋梗塞(心臓発作)の兆候として、心電図には特定の変化が現れることがあります。例えば、ST上昇やT波の逆転などです。
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心疾患のリスク評価:高血圧や糖尿病などの既往歴がある患者に対して、定期的に心電図を用いて心疾患のリスクを評価します。
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手術前の評価:手術を行う前に、患者の心臓の状態を把握するために心電図が実施されることがあります。
心電図の異常の解釈
心電図の波形に現れる異常は、心臓に関するさまざまな情報を提供します。これにより、医師は患者の健康状態を詳しく分析できます。以下は、よく見られる異常の一部です:
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ST上昇またはST低下:これらは心筋梗塞や虚血性心疾患の兆候である可能性があります。
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QT延長:QT間隔が異常に長くなると、危険な不整脈を引き起こすことがあります。
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P波の欠如:心房の収縮が適切に行われていない場合、心房細動などが疑われます。
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T波の逆転:心筋に酸素が十分に供給されていない場合、T波が逆転することがあります。
心電図の限界
心電図は非常に有用な診断ツールですが、すべての心臓の問題を検出することができるわけではありません。例えば、軽度の心筋梗塞や一時的な不整脈が心電図で見逃されることもあります。また、心電図は静的な瞬間の情報を提供するため、動的な心臓の変化を捉えるには長時間のモニタリングが必要です。このため、心電図以外の診断方法(例えば、エコー検査や血液検査)と併用されることが多いです。
結論
心電図は、心臓の健康状態を評価するための重要なツールであり、医師はこの検査を活用して、さまざまな心疾患を早期に発見し、適切な治療を行います。心電図の波形を正確に解釈することは、診断において非常に重要であり、患者の治療に直接的な影響を与える可能性があります。心臓の健康を守るためには、定期的な検査と早期発見が鍵となります。