急性胆嚢炎(きゅうせいたんのうえん)の完全かつ包括的な解説
急性胆嚢炎は、胆嚢に突然の炎症が起こる病状で、通常は胆石が原因となることが多い疾患です。胆嚢は肝臓で生成された胆汁を一時的に貯蔵し、消化の際に必要に応じて胆汁を小腸に分泌する役割を担っています。この胆嚢に炎症が生じると、消化機能に影響を及ぼし、場合によっては命に関わることもあります。本記事では急性胆嚢炎の病因、症状、診断方法、治療法、予防策に至るまで、包括的に解説します。

1. 急性胆嚢炎の病因
急性胆嚢炎の最も一般的な原因は胆石です。胆石は胆嚢内で形成される硬い結晶で、通常、コレステロールやビリルビンなどが原因となります。胆石が胆嚢の出口を塞いでしまうと、胆汁の流れが滞り、細菌が増殖しやすくなるため、炎症が引き起こされます。この状態が急性胆嚢炎です。
また、胆石以外の原因として、胆嚢に対する外的な圧力や血流の異常が影響する場合もあります。さらに、免疫力が低下している患者や、高齢者では感染症が引き金となることもあります。糖尿病や肥満、長期間の脂肪食などがリスク因子となることもあります。
2. 急性胆嚢炎の症状
急性胆嚢炎の主な症状は、以下の通りです。
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右上腹部の痛み:胆嚢が炎症を起こすと、痛みが右上腹部、特に肋骨の下あたりに感じられます。この痛みは急激に始まり、食事後に悪化することが多いです。
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発熱:炎症に伴って体温が上昇し、発熱が見られます。
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悪心・嘔吐:胆嚢炎が消化器系に影響を与えるため、食欲不振や嘔吐が生じることがあります。
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黄疸(おうだん):胆嚢炎が進行すると、胆汁の流れが障害され、皮膚や目の白目が黄色くなることがあります。
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便通の異常:胆汁の分泌が正常に行われないため、便が白っぽくなることもあります。
症状が急激に現れ、痛みが強くなることが多いため、早期の医療対応が求められます。
3. 急性胆嚢炎の診断方法
急性胆嚢炎の診断は、患者の症状や体調を基に、以下の方法で行われます。
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問診と身体診察:医師は患者の症状や痛みの場所、発症の経緯を詳しく聞き、右上腹部の圧痛や反跳痛を確認します。
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血液検査:感染症を示す白血球数の増加や、胆汁の流れに関わる酵素(AST、ALT、ALP)の値が上昇している場合があります。
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超音波検査(エコー):胆石の存在や胆嚢の炎症の程度を確認するために、最も一般的に用いられる検査方法です。胆嚢の腫れや胆石の有無が確認できます。
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CTスキャン:超音波検査で十分な情報が得られない場合や、胆嚢炎が重症化している可能性がある場合、CTスキャンを行うことがあります。
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MRI(磁気共鳴画像法):胆嚢や胆管の状態をより詳しく調べるために使用されることがあります。
これらの検査結果をもとに、急性胆嚢炎の確定診断が行われます。
4. 急性胆嚢炎の治療法
急性胆嚢炎の治療は、病状の程度や患者の健康状態に応じて異なります。主に以下の治療法が考慮されます。
4.1. 保存的治療(内科的治療)
軽度の急性胆嚢炎の場合、保存的治療が行われることがあります。これは以下の方法を含みます。
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抗生物質治療:胆嚢内での細菌感染が疑われる場合、抗生物質を投与して感染を抑える治療が行われます。
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絶食:胆嚢を休ませ、症状を和らげるために一定期間、経口摂取を控えることがあります。
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点滴:脱水を防ぐため、静脈から水分や栄養を補給します。
4.2. 手術療法
症状が重度であったり、合併症(胆嚢穿孔や膿瘍形成など)が発生した場合、手術が必要になることがあります。主な手術法には以下があります。
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腹腔鏡下胆嚢摘出術(ラパロスコープによる手術):最も一般的な手術法で、胆嚢を取り除く手術です。小さな切開を加え、カメラを使って胆嚢を摘出します。術後の回復が早く、入院期間も短縮されます。
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開腹手術:腹腔鏡手術が難しい場合や、炎症が広がっている場合は、従来の開腹手術が行われることがあります。
4.3. 管理療法
術後や回復期には、消化機能をサポートするための管理療法が必要です。消化酵素の補充や食事療法が含まれ、胆嚢がなくても消化が円滑に行えるようにします。
5. 急性胆嚢炎の合併症
急性胆嚢炎が進行すると、いくつかの深刻な合併症が生じる可能性があります。
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胆嚢穿孔:炎症が進み、胆嚢が破れてしまうことがあります。これにより、腹膜炎や全身感染症が発生する危険性があります。
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膿瘍形成:胆嚢内に膿がたまることがあり、これは非常に危険な状態です。
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胆管炎:胆管に炎症が波及すると、黄疸や高熱を伴う胆管炎が発生することがあります。
これらの合併症が進行すると、命に関わる場合があるため、早期の治療が不可欠です。
6. 急性胆嚢炎の予防
急性胆嚢炎を予防するためには、以下の生活習慣の改善が重要です。
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健康的な食事:高脂肪食を避け、バランスの取れた食事を心がけることが、胆石の予防につながります。
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適度な運動:肥満や過体重を防ぐために、定期的な運動を行うことが推奨されます。
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禁煙:喫煙が胆石のリスクを高めることが知られているため、禁煙が予防に役立ちます。
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定期的な健康診断:胆石がないか、定期的にチェックすることで、早期発見・予防が可能となります。
結論
急性胆嚢炎はその進行の速さや合併症のリスクから、迅速な対応が求められる疾患です。適切な治療を受けることで、多くの場合、回復が可能ですが、早期発見と適切な管理が重要です。食生活の改善や定期的な健康診断を行うことで、予防につながります。