「手足口病(てあしこうびょう)」は、主に小児に発症するウイルス性疾患で、発熱、発疹、口内炎を特徴とします。この病気は、特に夏季に流行し、感染力が非常に高いため、注意が必要です。本記事では、手足口病の原因、症状、診断方法、治療法について詳しく解説します。
手足口病の原因
手足口病の原因となるのは、エンテロウイルスの一種であるコクサッキーウイルス(特にA16型やA6型)や、エコウイルスなどです。これらのウイルスは、感染者の唾液、鼻水、便、または水疱から直接、あるいは空気中の飛沫を通じて感染します。ウイルスは非常に感染力が強いため、保育園や学校などの集団生活を送っている子どもたちの間で特に流行しやすいです。
手足口病は、感染者の皮膚や口内に現れる水疱からウイルスが放出され、接触した人々に広がります。また、便を介しても感染が広がることがあります。この病気の潜伏期間は通常3日から6日で、発症前に感染者が他人にウイルスを伝播することが多いです。
手足口病の症状
手足口病の主な症状には以下のようなものがあります:
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発熱: 発症の初期段階で、軽度の発熱が見られます。通常、38度前後の熱が出ることが多いですが、稀に高熱が出ることもあります。
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口内炎: 口の中、特に舌や口の内側に痛みを伴う小さな水疱が現れ、これが潰れて潰瘍になります。このため、飲食物を摂ることが難しくなることがあります。
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皮膚に現れる発疹: 発熱が続いた後、手のひらや足の裏、さらには膝や肘、臀部などにも発疹が現れます。これらの発疹は小さな赤い斑点で、のちに水疱が形成されることがあります。水疱は通常、痛みを伴いませんが、かゆみを感じることがあります。
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倦怠感と食欲不振: 発熱と口内炎に伴って、子どもは食欲がなくなり、倦怠感や体のだるさを感じることが多くなります。
手足口病の診断
手足口病の診断は、主に臨床的な症状に基づいて行われます。医師は、発熱、口内炎、手足に現れる発疹を確認し、他の病気との鑑別を行います。特に、同じ症状を示す水疱性の疾患(例えば、水痘やヘルペスなど)との違いを確認するため、医師は詳細な問診や視診を行います。
診断においては、血液検査やウイルス培養が必要となることはあまりありませんが、重症化のリスクが高い場合や他の疾患が疑われる場合には、必要に応じて追加検査が行われることがあります。
手足口病の治療法
手足口病には特効薬はなく、基本的には症状を緩和する対症療法が行われます。以下に代表的な治療法を挙げます。
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解熱剤の使用: 発熱に対しては、解熱剤(アセトアミノフェンなど)が処方されることがあります。高熱が続く場合に用いられますが、インフルエンザや水痘のような他の疾患との重複がないことを確認した上で使用されます。
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口内のケア: 口内炎の痛みを和らげるために、冷たい飲み物や食事を摂取することが推奨されます。辛い、熱い食べ物や飲み物は避け、口内を清潔に保つことが重要です。市販の口内炎治療薬や、医師が処方する軟膏などが使用されることもあります。
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水分補給: 発熱や食欲不振により脱水症状を引き起こす恐れがあるため、十分な水分補給が重要です。特に子どもは水分を摂取しにくいことが多いため、少量ずつ頻繁に水分を補給するようにします。
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休養と安静: 発熱と倦怠感が伴うため、十分な休養を取ることが大切です。無理に活動をすることは避け、体を休めることが回復を早めます。
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痛みの緩和: 口内炎がひどくなる前に早期に適切な処置を取ることで、痛みを軽減することができます。また、抗ウイルス薬は通常、手足口病には適用されませんが、二次感染(細菌感染)の兆候が見られる場合には、抗生物質が処方されることがあります。
重症化のリスクと予防
手足口病は通常は軽症で終わることが多いですが、稀に合併症が発生することがあります。特に、以下のような場合には注意が必要です。
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ウイルス性髄膜炎や脳炎: 稀に、ウイルスが脳に影響を与えることがあります。これにより、神経症状(頭痛、けいれん、意識障害など)が現れることがあります。
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心筋炎: まれに、心臓に影響を与えることがあり、これが原因で重篤な状態になることがあります。
重症化を防ぐためには、早期に発見し、適切な対応をすることが求められます。また、手足口病は感染力が非常に強いため、感染拡大を防ぐためには以下の予防策が重要です。
- 手洗いの徹底: 手足口病のウイルスは、接触感染や飛沫感染を通じて広がります。そのため、こまめな手洗いが予防の基本となります。
- 人混みを避ける: 感染者との接触を避けることが重要です。特に症状が現れた初期の段階で他の人との接触を避けることが推奨されます。
- 換気を良くする: 室内の空気を清潔に保ち、十分に換気をすることが感染拡大を防ぐために効果的です。
結論
手足口病は主に小児がかかるウイルス性疾患で、発熱、口内炎、手足に現れる発疹が特徴的です。感染力が非常に強いため、集団生活をしている子どもたちの間で流行しやすいです。診断は主に臨床的な症状に基づき、治療には特効薬はなく、対症療法が行われます。感染拡大を防ぐためには、手洗いや人混みを避けるなど、予防策を徹底することが重要です。