腹部の外傷に対する応急処置は、迅速かつ適切な対応が命を守るために極めて重要です。腹部はさまざまな内臓が集中しているため、外的な衝撃や怪我が及ぼす影響が深刻であることがあります。これらのケガに対する応急処置を正しく理解し、実行することは、けが人の命を救う上で欠かせない知識となります。
腹部の外傷の種類
腹部の外傷には、外部からの圧力や衝撃、切り傷、刺し傷、内部損傷などが含まれます。これらの外傷は、軽度のものから生命に関わる重大なものまでさまざまです。腹部の外傷の典型的な症状としては、痛み、膨満感、内出血、嘔吐、ショックなどが挙げられます。
腹部外傷には次のような種類があります。
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鈍的外傷(衝撃による外傷)
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交通事故や転倒、スポーツによる衝撃などで腹部に強い圧力が加わることによって発生します。これにより内臓(肝臓、腸、脾臓など)が損傷し、出血や内臓破裂を引き起こす可能性があります。
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切創や刺創
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ナイフやガラスの破片、鋭い物で腹部が切られる、または刺されることで発生します。これにより腹壁や内臓が傷つき、外部からの感染症のリスクも高くなります。
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腹部圧迫による損傷
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重い物が腹部に直接圧力をかけることによって内臓に損傷を与えることがあります。これには、事故や衝突によるもの、または重い物を持ち上げた際に誤って腹部に力が加わった場合などが考えられます。
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応急処置の基本ステップ
腹部の外傷を受けた場合、最初に行うべきことは、速やかに医療機関に連絡をし、専門的な治療を受けることです。しかし、それまでにできる応急処置は、けが人の状態を安定させ、合併症を防ぐために非常に重要です。
1. 安全な環境の確保
まず最初に、けが人を安全な場所に移動させることが重要です。交通事故などの場合、交通の流れや危険を避け、適切な場所に移動させることが最優先です。けが人が移動できる状態でない場合は、周囲の危険を避け、無理に移動させないようにします。
2. 呼吸と意識の確認
けが人が意識を失っている場合や呼吸が不規則な場合、直ちにCPR(心肺蘇生)を行う必要があります。意識がある場合は、無理に動かさず、できるだけ安静に保つことが大切です。腹部に大きな外傷がある場合、動かすことが内部の損傷を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。
3. 出血のコントロール
外部からの出血が確認できる場合、止血を試みます。ガーゼや清潔な布を使って圧迫止血を行い、傷口を直接圧迫します。出血が多い場合は、可能であれば圧力を加えて出血を抑え、負担を最小限に抑えるようにしましょう。出血のコントロールが難しい場合は、出血部位に強く圧迫し、救急車を呼ぶことが重要です。
4. 腹部への圧迫を避ける
腹部に強い衝撃を受けた場合、内臓に損傷が生じている可能性が高いため、腹部を圧迫しないようにします。けが人が吐き気や腹痛を訴えた場合、安静にして深呼吸をすることが最良の対応策です。腹部を触る際は慎重に行い、必要最小限にとどめます。
5. 傷口を清潔に保つ
切創や刺創がある場合、傷口を清潔に保つことが感染症の予防に繋がります。傷口が汚れている場合は、清潔なガーゼや布で覆い、可能であれば消毒液で消毒します。ただし、傷口が深くて内臓が露出している場合は、決して傷口に触れず、ガーゼなどで覆い、圧迫を加えずに速やかに医療機関に連絡します。
6. ショックの予防
腹部の外傷に伴う出血や内部損傷が原因でショック状態に陥ることがあります。ショック症状が見られた場合、けが人を平らな場所に寝かせ、足を少し高くして血流を脳に戻すようにします。また、呼吸が不安定な場合や意識が混濁している場合は、専門的な医療支援が必要です。
7. 温かい環境の維持
けが人がショック状態に陥っている場合、体温が低下することがあります。寒さから守るため、毛布や衣類でけが人を覆い、温かさを保ちます。ただし、過度に温めないように注意が必要です。過熱がかえって症状を悪化させることがあります。
医療機関への搬送
応急処置が終わった後は、できるだけ早急に医療機関に搬送することが重要です。特に、腹部の外傷による内臓の損傷が疑われる場合、外科的な手術が必要な場合もあります。

