金の抽出方法:土壌からの分離技術
金は古代から貴重な金属として扱われ、装飾品や通貨として利用されてきた。現在では、金の採掘と精錬技術が発展し、多くの方法が確立されている。本記事では、土壌や鉱石から金を分離する主要な方法を詳細に解説する。
1. 物理的方法
1.1 パンニング(手洗い選鉱法)
パンニングは、最も古典的な金採取方法であり、主に川砂金の採取に用いられる。
手順:
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川底の砂や土壌を金属製またはプラスチック製の皿(パン)に入れる。
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水を加えて皿をゆっくり揺らしながら回転させる。
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軽い砂や泥が流れ、比重の重い金が底に残る。
この方法は手軽だが、大規模な採掘には向いていない。
1.2 シェイキングテーブル(振動選鉱法)
シェイキングテーブルは、比重の違いを利用して金を分離する装置である。
手順:
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鉱石を細かく砕き、スラリー状(泥状)にする。
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振動するテーブルの上にスラリーを流す。
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軽い鉱物は流され、重い金はテーブルの溝に残る。
この方法は選鉱効率が高く、小規模な鉱山でも使用される。
1.3 遠心分離法
遠心分離機を用いると、より高効率で金を抽出できる。
手順:
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水とともに粉砕した鉱石を遠心分離機に投入。
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遠心力によって比重の重い金が機械の内側に蓄積。
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残った不要な物質は排出される。
この方法はパンニングよりも効果的だが、専用機器が必要となる。
2. 化学的方法
2.1 水銀アマルガム法
水銀を使用する方法で、昔から使われているが、環境汚染の問題がある。
手順:
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水銀を鉱石と混ぜて金と結合させる。
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金-水銀アマルガムを加熱し、水銀を蒸発させる。
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蒸発した水銀を回収し、金のみを残す。
この方法は高い回収率を誇るが、水銀の使用は環境や健康に悪影響を与えるため、多くの国で規制されている。
2.2 シアン化法(シアン浸出法)
現在最も一般的に用いられている方法で、大規模な金採掘に適している。
手順:
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砕いた鉱石をアルカリ性シアン化ナトリウム(NaCN)溶液に浸す。
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シアンが金を溶かし、「金シアン錯体」を形成。
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亜鉛粉末を加えて金を沈殿させる。
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沈殿した金を回収し、精錬する。
この方法は効率が高いが、シアンは毒性が強いため、安全な管理が必須となる。
2.3 チオ硫酸法
シアン化法の代替として研究されている方法で、環境負荷が低い。
手順:
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チオ硫酸アンモニウムを用いて金を溶解。
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亜鉛や活性炭を使用して金を回収。
現在、一部の鉱山で試験的に導入されているが、シアン化法ほど一般的ではない。
3. 電気精錬法(電解法)
電気を利用して金を分離する方法で、特に金を精製する際に使用される。
手順:
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金を含む鉱石を溶解し、電解液中に溶かす。
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電極を通じて電流を流し、金イオンを陰極に沈殿させる。
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回収された金を精錬して純度を高める。
この方法は、特にリサイクル金の精製に役立つ。
4. バイオ技術を用いた金の抽出
最近ではバクテリアを利用するバイオ鉱業が注目されている。
4.1 バクテリアによる金抽出
Thiobacillus ferrooxidansなどのバクテリアが硫化鉱石中の金を溶解し、回収しやすくする。
手順:
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鉱石をバクテリア培養液に浸す。
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バクテリアが鉱石の成分を分解し、金を遊離させる。
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遊離した金を化学的方法で回収する。
この方法は環境負荷が低いため、今後の採掘技術として期待されている。
5. 金の精錬と純度向上
採取した金には不純物が含まれているため、さらに精錬する必要がある。
5.1 クラウス法(塩素精錬)
塩素ガスを用いて不純物を除去し、純度を高める方法。
5.2 カップリング精錬
鉛を用いて金を精製し、純度99%以上の金を得る技術。
5.3 再結晶精製
溶解と再結晶を繰り返し、極めて純度の高い金を得る。
6. まとめ
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| パンニング | 簡単、安価 | 効率が低い、大量採掘不可 |
| シェイキングテーブル | 高効率、環境負荷が低い | 初期コストがかかる |
| シアン化法 | 回収率が高い | 環境リスクがある |
| チオ硫酸法 | 環境に優しい | まだ一般的ではない |
| バイオ鉱業 | 持続可能 | 実用化には時間が必要 |
金の抽出技術は進化を続けており、特に環境負荷の少ない方法が求められている。今後も新しい技術の開発と安全管理の強化が重要である。

