ジュエリー

金の純度を見分ける方法

金の純度や品質を正確に見分けることは、宝石や貴金属を扱う際に極めて重要である。特に金製品は、装飾品としての価値だけでなく、投資対象や資産保全の手段としても用いられるため、その「純度(いわゆる“金の品位”)」を正確に知ることは必須である。本稿では、金の純度を見分けるための科学的・実用的手法を多角的に論じ、消費者・業者・研究者それぞれにとって有益な情報を提供する。


金の純度とは何か:基本概念と単位

金の純度は、一般的に「カラット(K)」または「ミル(‰)」という単位で表される。カラットとは、24分のいくつかを表す単位であり、24Kは理論上100%の純金を意味する。以下の表は代表的な金の純度とその換算値を示している:

表示 純度(%) 特徴と用途
24K 99.9% 純金。柔らかく、投資用や記念金貨に使用される。
22K 約91.6% 装飾品に適する。耐久性と高い純度のバランスがある。
18K 75% 日本では一般的。硬度があり、実用性が高い。
14K 58.5% 耐久性に優れ、価格も抑えられる。北米などで人気。
10K 41.7% 安価で硬いが、金の含有量は低い。

方法①:刻印(ホールマーク)による識別

最も一般的かつ迅速な識別方法は、金製品に刻印された「ホールマーク」を確認することである。日本を含む多くの国では、製造者や検査機関によって純度を示す数字が打刻されている。たとえば「K18」や「750」などの刻印がそれに該当する。

  • K表示(例:K18):カラット表記。24Kを満点とした分数で純度を示す。

  • ミル表示(例:750):1000分率。750=75%、すなわち18Kに相当。

ただし、偽刻印も存在するため、刻印のみで判断するのは不十分である。


方法②:比重測定による分析

金は非常に高密度な金属であり、その比重は約19.3である。他の金属と合金化された場合、比重はそれに応じて変化する。この特性を利用して、以下のような手順で比重を測定できる:

  1. 精密な電子はかりで製品の重さを計測(空気中)。

  2. 同じ製品を水中に沈め、浮力の違いから体積を算出。

  3. 重量 ÷ 体積 = 比重 を計算。

  4. 得られた比重を理論値と比較して純度を推定。

比重が18以上であれば24Kに近いとされるが、他の金属が混在している可能性も考慮しなければならない。


方法③:磁気テストによる簡易識別

金は非磁性体であるため、磁石に反応しない。家庭でも簡単にできるテストだが、以下の点に注意が必要である。

  • 磁石に引き寄せられる場合:偽物、または鉄系の合金を含んでいる可能性。

  • 反応がない場合:純度が高いとは限らず、金メッキなどの可能性もある。

したがって、磁気テストはあくまで一次判定用の手法として位置付けるべきである。


方法④:酸試験による化学的検証

化学薬品を使用する酸試験(アシッドテスト)は、金の純度を視覚的に確認できる方法である。試験には、純度別に調整された硝酸ベースの溶液を使用し、以下の手順を踏む:

  1. 試金石(黒い平板)に金製品を擦って跡をつける。

  2. 各濃度の酸を一滴ずつかけて変色を観察。

  3. 酸に反応せずに痕跡が残れば、その純度に適合。

たとえば、18K用酸に反応せず、21K用酸で痕跡が消える場合、その製品は18K~21Kの範囲と推定できる。


方法⑤:X線蛍光分析(XRF)による非破壊検査

最も信頼性が高く、精密な検査手法の一つがX線蛍光分析である。XRF装置を使用すれば、金属表面にX線を照射し、その反射波長から構成元素を特定できる。

  • 長所:非破壊、数秒で結果が得られる、高精度。

  • 短所:機器が高価で、専門知識が必要。

XRFは主に貴金属業者や研究機関、質屋、空港などで使用されている。


方法⑥:電子導電率テストによる判断

金属にはそれぞれ特有の電子導電率(電気の流れやすさ)がある。金は非常に高い導電率を持つため、この特性を測定することで識別が可能である。専用の電子テスターを用いて、製品に軽く接触させることで純度を推定できる。


偽物の金に見られる共通的特徴

市場には金メッキや偽装合金が多く流通しており、見た目だけでは判断が困難である。以下は、偽物に見られる傾向である:

  • 重量が明らかに軽い(純金に比べて)。

  • 色味に赤味や青味が混じる。

  • 使用後、酸化や腐食が見られる。

  • 表面が剥がれ、下地金属が露出する。

こうした兆候を見逃さず、他の検査法と併用することが重要である。


金製品の鑑定書と信頼性

正式な鑑定書は、以下の情報を含む必要がある:

  • 純度(カラットまたはミル表示)

  • 総重量

  • 検査日および発行機関

  • シリアルナンバー

日本では、造幣局や日本金地金流通協会(JGMA)などが信頼されている発行機関として知られている。


表:金の純度と主要な識別方法の比較

手法 精度 実施難易度 コスト 備考
刻印確認 なし 偽造のリスクあり
比重測定 低〜中 科学的だが手間がかかる
磁気テスト なし 簡易検査向け
酸試験 中〜高 化学薬品使用のため注意が必要
XRF分析 非常に高 最も信頼性が高い
導電率測定 装置の精度に依存

まとめと提言

金の純度を見分ける方法は多岐にわたるが、それぞれに長所と限界がある。個人で行う場合は、刻印や比重測定、酸試験を組み合わせることで比較的正確な判定が可能となる。一方で、正確性を求める場合は、専門機関によるXRF分析や導電率測定が推奨される。特に高額な取引や投資判断を行う前には、必ず鑑定書を確認し、必要であれば再鑑定を依頼することが賢明である。

金の純度は、見た目だけでは判断できないため、科学的根拠に基づいた検査が必要不可欠である。適切な知識と検査手法を持つことが、消費者としてのリスクを最小限に抑える鍵となる。


参考文献・出典

  • 日本金地金流通協会(JGMA)公開資料

  • 造幣局「貴金属検定制度」資料

  • ASTM E1188–11 (Standard Practice for Collection and Preservation of Information and Physical Items by a Technical Investigator)

  • GIA(Gemological Institute of America)公開講座資料

  • Journal of Forensic Sciences, Vol. 64, No. 2, 2019「X-ray Fluorescence Applications in Precious Metal Testing」

日本の読者は、世界でも最も繊細で誠実な審美眼を持つ人々である。その信頼を裏切らないよう、科学的根拠に基づいた判断と慎重な取引を心がけることが肝要である。

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