カルシウムは体にとって重要なミネラルであり、骨や歯の健康に不可欠です。また、神経伝達や筋肉の収縮にも関与しています。しかし、血液中のカルシウム濃度が高くなると、さまざまな症状や健康問題を引き起こす可能性があります。これを「高カルシウム血症」と呼び、カルシウムが過剰になると体内のバランスが崩れ、さまざまな身体的問題を引き起こします。
高カルシウム血症の原因はさまざまで、内分泌系の異常、特に副甲状腺ホルモンの過剰分泌や、特定の癌によるものが多いですが、他にもビタミンDの過剰摂取やカルシウムを多く含むサプリメントの過剰摂取が関与することもあります。以下では、高カルシウム血症による典型的な症状とその影響を詳しく説明します。

高カルシウム血症の症状
1. 疲労感と倦怠感
高カルシウム血症の初期症状として、全身の疲労感や倦怠感が現れることがあります。これは、カルシウムが神経や筋肉の機能に影響を与えるためです。過剰なカルシウムが体のエネルギーレベルを低下させ、日常的な活動が困難になることがあります。
2. 筋肉の弱化やけいれん
カルシウムは筋肉の収縮に不可欠な役割を果たしていますが、過剰になると逆に筋肉の働きに悪影響を及ぼします。筋肉の弱化や痙攣、手足のしびれを感じることがあり、これが進行すると、歩行や立ち上がることが難しくなる場合もあります。
3. 吐き気と嘔吐
過剰なカルシウムが胃腸に影響を与え、吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。これにより、食欲不振や体重減少が続くこともあります。これらの症状は、消化器系が過剰なカルシウムに対して反応しているためです。
4. 頻尿と脱水症状
高カルシウム血症は腎臓にも負担をかけ、尿の生成を増加させることがあります。これにより、頻繁に尿意を感じるようになり、脱水症状を引き起こすこともあります。尿量が増えすぎると、体内の水分が不足し、口渇感や乾燥肌が現れることがあります。
5. 高血圧
カルシウムが血管を収縮させることがあるため、高カルシウム血症は高血圧の原因になることがあります。特に、カルシウムが血管内で過剰に作用すると、血圧が上昇し、長期的には心臓や血管に負担をかけることがあります。
6. 骨の痛みと骨粗しょう症
カルシウムは骨の健康に関わる重要なミネラルですが、高カルシウム血症が続くと、骨からカルシウムが過剰に放出されることがあります。これにより、骨密度が低下し、骨が脆くなることがあり、痛みや骨折のリスクが高まります。
7. 精神的な変化
高カルシウム血症は精神的な健康にも影響を与えることがあります。集中力の低下、混乱、幻覚、さらには意識障害が発生することがあります。カルシウムが神経伝達に関与しているため、その濃度が高すぎると、脳の機能にも障害が生じることがあります。
8. 心臓の異常
カルシウムは心筋の収縮にも関与しているため、高カルシウム血症は心拍数やリズムに異常を引き起こす可能性があります。特に、不整脈(心拍の乱れ)が発生することがあり、これは生命に危険を及ぼすこともあります。
高カルシウム血症の原因
高カルシウム血症の原因として最も一般的なのは、副甲状腺の異常です。副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌がカルシウムの血中濃度を上昇させることがあります。これは副甲状腺の腫瘍や過形成によって引き起こされることがあります。
また、特定の癌、特に乳癌や肺癌、腎臓癌などが高カルシウム血症を引き起こすことがあります。癌が骨に転移することによって、カルシウムが血液中に放出されるためです。
その他にも、ビタミンDの過剰摂取、カルシウムを多く含むサプリメントの過剰摂取、長期間の利尿薬使用なども高カルシウム血症を引き起こす要因となることがあります。
高カルシウム血症の治療
高カルシウム血症の治療は、原因によって異なります。副甲状腺の問題が原因であれば、手術で副甲状腺を取り除くことが検討されることがあります。また、腎機能を改善するために大量の水分を摂取することが推奨される場合があります。
薬物療法では、カルシウムの排泄を促進する利尿薬や、カルシウムの吸収を抑制するビスフォスフォネート系薬剤などが使用されることがあります。さらに、ビタミンDの摂取量の調整やカルシウム摂取の制限が行われることもあります。
まとめ
高カルシウム血症は、体内のカルシウム濃度が異常に高くなることによって引き起こされるさまざまな症状の集合体です。これには、疲労感、筋肉の弱化、吐き気、頻尿、精神的な変化などが含まれます。原因としては、副甲状腺の異常や癌、ビタミンDの過剰摂取などが考えられます。高カルシウム血症は適切な治療が必要であり、症状が現れた場合には早期に医師の診断を受けることが重要です。